糖質加水分解酵素とそのインヒビターに関する研究
東京大学 農学部 応用生命科学課程 生物素材化学専修
私は、植物バイオマスがセルロースやリグニンなどの難分解な高分子で利用が難しいことに課題を感じ、多糖を分解する酵素とその阻害タンパク質について研究を行いました。
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私たちの社会はこの先数十年で、化石資源を使わない世の中に急激にシフトすることが求められています。その中で生きていくために必要なエネルギーやマテリアルをどのように取得するかを考えると、植物由来のバイオマスを利用するということの重要性が非常に高まることが予想されます。強酸や強塩基を用いずに、単糖のような利用しやすい形にバイオマスを変換するために、酵素糖化という手法が用いられます。これはキノコのような担子菌などが樹木を分解するメカニズムを応用した手法ですが、分かっていないことも多く、効率やコストの面で大規模化には課題がありました。
卒業研究では、糖質加水分解酵素の一種であるGH12の反応特性の評価や、それに対応する植物由来インヒビターXEGIPの系統解析を行いました。結果としていくつかの重要な示唆や展望を得ることができました。基礎研究的な側面が大きいものではありますが、将来的には社会に応用する価値のある成果を出せる研究テーマだと考えています。
酵素に関する研究は、酵素の発現や精製に多くの時間を費やすため、T.O.財団様のご支援によって研究に多くの労力をつぎ込むことができました。感謝の念に堪えません。
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南大西洋における下部–中部中新統石灰質ナノ化石層序
千葉大学 理学部 地球科学科
私は南大西洋における下部–中部中新統石灰質ナノ化石層序というテーマのもと卒業論文に取り組みました。
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石灰質ナノプランクトンは約2億年前に地球上に登場し、海流に乗って世界中の海洋に広く分布して、現在の海洋にも多く生息しています。この石灰質ナノ化石は、進化や絶滅を頻繁に繰り返し、さまざまな形態の種が存在したことから、堆積物の詳細な地質年代決定と対比に最も重要な化石として用いられています。
また、石灰質ナノプランクトンの分布は表層海洋の水塊の性質に依存するため、その解析から、過去の気候変動を考察することが可能です。
中新世は現在の地球環境への橋渡しとなる時代であり、とりわけ、前期—中期中新世はグローバルな海洋環境が変化したと考えられています。
この変化には、南極大陸の氷床の拡大が影響しているとされていますが、南半球側の中—高緯度海域において得られた堆積物試料は必ずしも多くないため、それらの海域における詳細な環境変動は明らかになっていません。
そこで私は、当時の海洋環境を復元するために必要不可欠な年代モデルを構築するべく、石灰質ナノ化石を検討して、南大西洋の石灰質ナノ化石基準面を明らかにすることを目的として研究を行いました。その結果、前期—中期中新世における石灰質ナノ化石の出現/絶滅の記録を復元することができました。
T.O環境財団様の支援があったため、自分の研究に専念することができました。誠にありがとうございました。今後は大学院に進学してさらに研究を進めていこうと思っています。
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有機結晶粒子群の形状制御
東京農工大学 工学部 化学物理工学科
私は気液界面上に析出させた有機結晶粒子群の形状を制御する研究を行いました。
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結晶形状は結晶の溶解性や濾過性を大きく左右するため、制御することが重要です。形状を制御するには過飽和度を変更することが一般的ですが、本研究では結晶同士の相互作用が形状に与える影響を検討しました。
実験や解析は上手くいかないことも多く、試行錯誤する必要がありました。そのため、アルバイトの時間すら惜しい状況でしたが、奨学金を頂けたおかげで、時間を気にせず研究に没頭することができました。心より感謝申し上げます。
卒業後は同大学院に進学し、晶析技術に関する研究を続けて参ります。将来は、学んだ技術を生かし、洗浄溶媒の削減、排水処理技術の向上などを行い、環境問題解決に貢献したいと考えております。
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香港科技大学への交換留学
九州大学 工学部 土木工学科
私は、貴財団から頂いた奨学金を活用し、香港科技大学へ交換留学を行い、英語、中国語の語学力を向上させました。
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また、自分の卒業研究のテーマである、廃棄物処理場から排出されるマイクロプラスチックに関する研究を当大学で行っている方にお世話になり、研究の手伝いや、香港の下水処理場を見学に行き、日本との違いについて学びました。 貴財団からのご支援がなければ、充実した留学生活を送ることは難しかったです。ご支援を頂き誠にありがとうございました。
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土壌中農薬成分一斉分析法の開発と環境動態および生態リスクの評価について
愛媛大学 農学部 生物環境学科
私は水田土壌を対象とした土壌中農薬成分一斉分析法開発とその環境動態および生態リスクの評価を行うことを目的とした研究を行っています。
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開発した分析法を用いて水田土壌を調査した結果、いくつかの農薬成分は散布後、土壌中に長期間、残留していることが明らかとなりました。また、生態リスク評価では有機リン系やネオニコチノイド系農薬についてはリスクが見られる結果となりました。今後は大学院に進学し、さらに農薬成分の環境動態の解明について進めていきたいと考えています。本研究で測定対象とした水田土壌は分析が難しく、分析法の開発に時間を要しましたが、奨学金をいただいたことで、集中して研究に取り組むことができました。ありがとうございました。
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